大庭徹建築計画 | Toru OBA Architects

Toru OBA Architects

東山の袋路長屋 | Row houses along a blind alley in Higashiyama

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健康的な社会を目指して
―街、家、人、にまつわる3つの「繋ぐ」―

京都市東山の幹線道路に近接し、近年は市内の他の地域と同様に観光ホテルの建設が次々と進む地域の一画にある長屋(借家)の改修工事である。長屋は1棟で4住戸が連なり、袋路を挟んで向かい合うように同規模の長屋2棟が建っている。計8住戸の外観と袋路、そして空き家だった2住戸の内部の改修を、住人が住み続ける状況の中で行った。計画では「健康的な社会」への貢献を目指して、以下の3つの「繋ぐ」ということを意図した。
1.「街」の「過去」と「未来」を繋ぐ
『古い家のない街は、思い出のない人間と同じだ。』と言ったのは日本画家の東山魁夷である。新しい建物と古い建物がほどよく混在し街の歴史が受け継がれ、新旧さまざまな住まいの選択肢がある街になることへの貢献を意図して計画を行った。具体的には、築90年を越す長屋を、京都の都市型住宅の文化と言える京町家の特徴的な要素(坪庭、土間、出格子、障子、左官仕上げの壁、等)を継承すべく、それらを現代の生活に沿うように再構成し導入し直した。
2.「家」を「街」と繋ぐ
京都の町家や長屋は本来都市型住宅として密集地でも快適に暮らせるさまざまな工夫を備えている。一方で改修前のこの長屋は、陽光や風の通り道となる坪庭や路地に面した開口部は過去の増改築によって閉ざされ、明るさ、風通し、自然を感じられる環境、全てを失ってしまっていた。改修では一部現代的に再構成し重層配置した建具によってプライバシーを繊細に守りながら、内部と再生した坪庭や袋路とを繋ぎ直すことを計画した。その結果として、家の内部で自然を感じられる快適さと袋路との繋がりを取り戻し、袋路を介して街との接続が再開されることを目指した。
3.「人」のタテの繋がりをつくる
この袋路空間が子供が遊ぶのに適した環境という視点もあり、内部の改修では子育て世代や若い世代の人たちが住みやすくなる工夫を水廻りなど随所で行っている。実際、改修工事が行われた住戸には30代のご夫婦が入居し、長屋全体では生まれた時からここに住み続ける80歳代の方から未就学児や小学生のいる世帯、大学生によるシェアなど、多世代の世帯が暮らしている。隣人の顔も分からないマンション暮らしが指摘される現代社会の中で、この袋路長屋では多世代の人たちが路地を介して顔を合わせ、コミュニケーションをはかれる住環境が生まれつつある。

建築場所  :京都府京都市
用  途  :集合住宅
工事種別  :改修工事
構  造  :木造2階建て
共同設計  :森重 幸子(京都美術工芸大学 准教授)
施  工  :光田工務店 光田 彰、水頭 美里
撮  影  :大庭徹建築計画

*(公財)京都市景観・まちづくりセンター主催の令和元年度「京町家まちづくりファンド改修助成事業」に採択